2025年3月17日、東京大学多様性包摂共創センター(IncluDE)主催イベント「同性婚訴訟から考える結婚の平等とセクターをこえての協働~誰もが自分らしく生きられる社会の実現~」が、東京大学福武ホールラーニングスタジオにて開催されました。
(後列左から)小山大作さん、宍戸常寿さん、平野さん、杉山詩織さん
(前列左から)松中権さん、熊谷晋一郎さん、寺原真希子さん
本イベントでは、日本における同性婚訴訟の現状や展望、法的視点からの考察、企業の取り組みなどについて「コプロダクション」を軸に議論が行われました。
寺原真希子さん(公益社団法人「Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に」代表理事)
公益社団法人「Marriage For All Japan-結婚の自由をすべての人に」代表理事の寺原真希子さんからは、同性婚訴訟の最新状況が共有され、日本がG7で唯一同性カップルに法的保障を与えていないこと、「結婚の自由をすべての人に」訴訟で違憲判決が続いていることが報告されました。あわせて、Marriage For All Japanによる政治家や企業に対する同性婚の実現に向けた様々な活動が紹介されました。
宍戸常寿さん(東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授)
東京大学大学院法学政治学研究科・法学部教授の宍戸常寿さんは、憲法第14条「法の下の平等」に基づき、同性婚を認めないことが「自律」「地位」「尊厳」の観点から個人の権利を侵害していると説明しました。また、法律の整合性と社会の変化の反映の難しさに言及し、企業や市民社会の参画の重要性が浮かび上がりました。
平野さん(株式会社明治 人財開発部DE&I推進G)
杉山詩織さん(株式会社明治 カカオマーケティング部)
小山大作さん(ラッシュジャパン合同会社 PR / GIVINGマネージャー)
企業の取り組みとして、株式会社明治の平野さん、杉山詩織さんからは、「DE&Iポリシー」や従業員有志による「LGBTQ₊アライネットワークマーブル」が紹介され、バレンタインの新たな価値観の提案など、多様性を尊重する活動、その進め方について報告がされました。また、ラッシュジャパン合同会社の小山大作さんは、「ショップは最大のメディア」として同性婚の法制化に向けたキャンペーンを展開し、議員の賛成率向上やショップがLGBTQ₊コミュニティにとって安全なコミュニティスペースとなった事例を紹介しました。
熊谷晋一郎さん(IncluDE DEI共創推進戦略室長)
IncluDEのDEI共創推進戦略室長の熊谷晋一郎さんからは、障害者と婚姻についての考察が述べられ、旧優生保護法下での強制不妊手術が憲法違反と判断されたことを踏まえ、障がい者の恋愛・結婚・育児支援の進展、みんなで子どもを育てられる環境の整備等が求められていることが議論されました。同時に、「結婚からの自由」「結婚への自由」についても言及されました。
パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションでは、同性婚を選択できる社会を実現しつつ、婚姻を絶対視しないことの重要性や、プラットフォームやコミュニティを活用した取り組みの必要性が指摘されました。また、今後の推進の鍵として、①ナラティブ(当事者の声) ②ロジック ③エビデンスがあげられ、セクターを超えた協働、共創の重要性が一層強調されました。
その後の懇親会では、前半での発表、ディスカッションを受けて、企業、大学、当事者・支援者団体同士が繋がり、セクターを超えた意見交換が実現しました。
多様な視点から婚姻の平等について考察し、参加者一人ひとりが「誰もが自分らしく生きられる社会」の実現に向けて何ができるかを考える機会となりました。
イベント終了後、参加者からは、「ビジネスを含む様々な立場からの参加があり、同じ方向に向かって進めていくためにどういうことができるかディスカッションされていたのがこれまであまり見たことがなくて興味深かったです」「ハードも大事ですが、場と人のネットワークが最後は最強のように感じています」「何事も、1人では難しく志同じ人と繋がり、声を出していく事を改めて実感できた」など、「自分らしく生きられる社会の実現」に向けてさまざまな立場の人々が情報を共有し、一緒に考え、つながることの重要性に気づいたという意見をいただきました。
IncluDEでの取り組みが、よりよい未来に向けた連帯のプラットフォームとなるよう、今後ともつとめてまいります。
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第1回目のSOGIイベント(2024年7月2日開催)「SOGIの多様性と包摂~誰もが自分らしく生きられる社会を目指して~」についての詳細は、こちらでご確認いただけます。

第1回SOGIイベントの様子