(ポスター説明) タイトル:当研究室における「雑談の見える化」の取り組み 応募団体:東京大学先端科学技術研究センター 当事者研究分野 くまがや研究室 東大先端研ロゴマーク ■背景 2018年10月ろう者《ろうしゃ》メンバーAが着任 2019年2月ろう者《ろうしゃ》メンバーBが着任 2020年3月コロナ禍による会議のオンライン化、雑談の減少、研究室内における雑談ニーズの高まり、情報保障担当者が着任、行動制限の緩和により対面で集まる機会が増加、聴者メンバーの増加、難聴メンバーが着任 2022年7月雑談の見える化の試行 ■方法 ・2022年7月ごろから2023年10月まで、研究室居室に投影用のモニターを配置し、文字起こしアプリを起動したタブレット端末とモニターとを接続した。 ・2023年10月に、一部メンバーと意見交換を行った後、研究室のコミュニケーションツールを用いて、「『雑談の見える化』の実践を経て、感じたことや考えたこと」を自由に記載してもらった。また、対面で意見交換の機会を設けた。 ・下記は、使用した文字起こしアプリケーションの一例。UDトーク、YYProbe、YY文字起こし、Grop Transcribe(Microsoft) ■結果と考察 ●図 実際の雑談時の様子(図の補足説明:実際の雑談時の様子の写真が2枚提示されている) ・その場にいるろう者、難聴者に限らず、聴者も文字起こしを閲覧できる。端末とモニターの接続はアダプターとHDMIケーブルのみであり、極めて単純である。雑談時は、互いの顔が見える位置に立つ(座る)ことが多い。 ●ろう者《ろうしゃ》・難聴者 ・盛り上がっていることはわかるが理由がわからない、感情共有ができないという問題の解決につながりうると思う。〈難聴者/中途失聴〉 ・(ろう者《ろうしゃ》2名が「入職時と現在で最も大きく変わったことはなにかと聞かれて」)情報保障担当の職員の入職が最大の変化であり、雑談の見える化はそれに次ぐ大きな変化である。 ・以前の職場で、自分以外の手話話者が入職して初めて、周りが手話に関心を持ち始めるということがあった。 ・UDトークを法人契約していたものの、自分以外誰も使用していない職場も過去体験したが、ここはそうではない。使用を継続していける理由が気になる。 ●聴者 <意識の変容> ・文字起こしを見ながら、自分の話し方を調整する(大きな声で、ゆっくり、はっきり話す)ようになった。 ・文字起こしの正確性を優先するがゆえに、複雑な言葉遣いを避けるようになった。 ・自分は雑談中に手話通訳をすることがあるため、文字起こしの近くに座って参加するようになった。(手話通訳者の回答) ・文字起こしに誤字があった場合は、それを指さして言い直しをしている。 <不安・懸念の芽生え> ・複雑な言葉遣いを避けることを、相手に失礼と思われていないか不安。 ・ろう者《ろうしゃ》や難聴者がいる場で文字起こしがない場では、安心して話ができなくなった。 ・音声発話を一方通行で伝える方法なので、ろう者《ろうしゃ》に口話を強いてしまっていないかが気になる。(ろう者《ろうしゃ》との会話で手話単語を用いて話す聴者の回答) ■意識変容・取り組みの継続の要因は? ・環境(図の補足説明:手話話者、聴者が複数名いる環境を表したイラスト) ・情報保障ありの会議の定期開催(図の補足説明:zoom ミーティングにおいて、手話通訳と文字通訳が常に参加者全員が見える状況) ・機器の簡便化、慣れ(図の補足説明:iPadで文字起こしアプリを立ち上げ、HDMI変換アダプターとモニターを接続する作業方法の説明) ・複数メンバーからの前向きなフィードバック(図の補足説明:一人目のコメント「いいところに目を付けたね!重要だね!」二人目のコメント「こうするともっと見やすくなりそう!」) (ポスター概要/日本語) タイトル:当研究室における「雑談の見える化」の取り組み キーワード: 情報保障、文字起こし、雑談、コミュニケーション、ろう者 伝えたいこと: 業務に関する連絡以外にも職場では雑談が多く交わされているが、雑談の情報保障が必須とはなっていないため、ろう者メンバーは疎外感を持ちやすい。しかし、環境の工夫によって常に雑談が見える化し、ろう者メンバーは自分の都合の良い時に情報を取得し、雑談に加わるかどうかを選択することができる。「雑談」が「誰でも参加できるスタイルが当たり前」という職員の意識に変化が生まれ、「自分で話し方に気をつけるなど」行動変容につながる。 どのような意識の変容をもたらしたいか: ろう者も含めて仕事を円滑に進めるためには情報が常に可視化されていることが重要であり、みんなで文字を確認しながら雑談する習慣を作りたい。 応募団体についての紹介: ユーザーリサーチャーと研究者、職員が日々の困りごとを当事者研究によって研究し、共同創造につなげている。 氏名:先端科学技術研究センター当事者研究分野(くまがや研究室) (ポスター概要/英語) Title: Our Laboratory's Initiatives on 'Visualization of Informal Conversations' Keywords: information accessibility, captioning, informal conversation, communication, Deaf What we would like to convey: In the workplace, informal conversations often occur frequently beyond just work-related communications, but since information accessibility for such informal conversations is not essential, Deaf members tend to feel excluded. However, with environmental adjustments, informal conversations are always visualized, allowing deaf members to obtain information at their convenience and choose whether or not to join the conversations. This shifts the staff’s mindset to see informal conversations as a style where anyone can participate, leading to behavioral changes such as paying more attention to how they speak themselves. The change in awareness we want to bring about: It is important for information to always be visualized in order to smoothly proceed with work including deaf people, and we want to create a habit of having informal conversations while everyone confirms the text. Team/Project: User researchers, the other researchers, and staff study daily challenges through participatory action research (tojisha-kenkyu) and connect this to co-creation. Name: Research Center for Advanced Science and Technology, Field of Tojisha-kenkyu (Kumagaya Laboratory) 以上